イタリア買い付け道中記 2019夏 その6

今回Corrado:コッラードとSimona:シモーナに縁あって知り合い、彼らのお陰で
数々の生産者を訪ねることが出来たのは大変ラッキーでした。
ただ自分で旅人として訪れるよりは何倍も濃い充実した滞在となったと思います。

彼らにお礼をして一路進路を北に向けました。
今度はEtna:エトナ山の北側に廻ります。
実は私、エトナ山の南側に住んでいた事もあり、その後も南側については度々訪ねては
友人達に世話になって、色々な場所を見ておりました。

「エトナ山って溶岩ゴツゴツの黒い山」ってイメージが私の頭の中に確立されて
いたのですが、北側に廻ってビックリ。

富士山のように裾の広い雄大なエトナ山の緑を南側に、緩やかな起伏が連なる
Parco dei Nebrodi:ネブロディ公園の緑を北側に、それ以外何も無い道沿いに
とった宿への道すがら、車窓から見える風景にポカンと口を開けてしまいました。

だって緑なんだもん。
ほんとビックリしました。
エトナってこんなに豊かだったんだ~って感じ。

f:id:PIATTI:20190817195524j:plain


f:id:PIATTI:20190817195604j:plain

f:id:PIATTI:20190817201530j:plain


宿について荷物を解いて身支度を整える間、西陽が差してきました。
アペリティーボにちょっといい感じ・・・なんてお優しいものではなく

暑い・・・というか熱い。

宿はかつての富裕層が所有していたと思われる巨大な屋敷を改装した体で、
敷地内にはプールもありました。
いっその事、水着にでもなってプールでゆっくりスパークリングなぞ飲みつつ
微睡んでみようか・・・否否柄でも無いので仕事仕事。

宿で荷物を解き、身支度を整えて向かったのはRandazzo:ランダッツォ。
エトナ周遊鉄道の駅があるので、これに乗ってCatania:カターニアから来ることも
出来ます。
一周110Kmほどを3時間半くらいかけてのんびり走るディーゼル車両の旅も風情が
ありそうですが、いつも駆け足にならざるを得ない私の旅ではしばらくお預けです。

そんな訳でレンタカーで駆け回る私。
イタリアの旧市街などの狭く入りくんだ道を走り回るには、小さい車が適している
のは火を見るより明らかですが、荷物の多い私はどうしても大きめの車になるため、
小さい村では運転に苦慮する事が結構あるのです。

この町の入り口あたりに辿り着くまではスイスイだったのですが、Google Mapに
頼り切っている私は、彼の時折気まぐれな案内に翻弄されてしまい、ついつい
旧市街の方に突っ込んでしまいました。

や、やばいっす!

アラブ文化の影響色濃い南イタリアのご多分に漏れず、旧市街の道は細く入り組んで
クネクネでございます。
ちなみに借りた車は、今流行りのSUV
最新設備が満載ですから、前後左右にもセンサーがついており、それがもう
真っ赤っかに光ってピーピー鳴りっぱなし。
一台通るのがやっとの道なので、突っ込んだ以上は引き返せないし、降りて
確かめようにも、左右のミラーと壁との隙間が数センチのところが多くて、
つまりはドアなんか開くわけ無いです。

f:id:PIATTI:20190817195918j:plain

f:id:PIATTI:20190817200744j:plain


ホント、泣きそうな感じになっていると、どこからともなくやって来る爺さんたち。
家の前で集まってカードゲームを楽しんでいた風ですが、アホな東洋人が
デッカイ車で道に突き刺さっているのを見て助け舟を出してくれたのです。

「もうちょっと右に切って、いけるいける、ほれ、もうちょっと、あ、
そっちじゃなくて、否、ちょっとバックして、今度は左に切って・・・」みたいな

私、こう見えても毎日車を運転してまして、車もマニュアルですし、はい、
一応クルマ好きですから運転も多少の自信があるんですけど、はい、えー、
今は汗だくです。

この場は爺さんの指示に従うほかなく、ハンドルぎこぎこ一杯切って、
エンジンぶんぶんで何とか脱出させてもらいました。
最後の難関で上りの急カーブは恥ずかしくもエンスト(マニュアルなんで)連発
しましたが、既に廉恥心など吹っ飛んでいました。
クルマを降りてお礼を言おうかと思ったら、既に彼らは普通にもとの定位置に戻って
カードゲームを始めたようです。

ほどなくして町の中心の教会近くに車を停めた頃にはどっぷり疲れてしまっていました。
そこから歩いてすぐに辿り着くのが今回の目的地。

Pasticceria Musumeci:パスティッチェリア・ムスメチ

ここには大変有名なGranita:グラニータ職人がいるのです。
かねてより大阪の超有名ジェラテリアを営む茂木さんから話に聞いていたところで、
今回ようやく念願かなっての訪問となりました。

事前に訪ねる旨を茂木さんを通して伝えていたので話はスムーズ。
笑顔で出迎えてくれたのはGiovanna:ジョヴァンナさん。
挨拶もそこそこに、
「で、何食べる?」
と、言いつつお勧めのグラニータをどんと持ってきてくれました。
お約束のブリオッシュとともに先ずは頂くことに。

いやはや、私グラニータ好きですし、結構いろいろ食べてますけれど、こりゃ驚いた。
アーモンドにしても柑橘類にしても、何というかフルーツそのまま食べるより
フルーツなんです。
いやはや凄い、凄い。
美味しいってもんじゃないですね、思わず唸ってしまいました。

f:id:PIATTI:20190817200845j:plain

f:id:PIATTI:20190817200907j:plain


聞けば、彼女は毎日自分が納得した果物だけを選んで仕入れて作っているとのことです。(なのでメニューも日替わり。)
そもそも果物の味が濃厚なシチリアでも相当に良いもの選ぶ目利きである事は間違いないと思います。
そしてそれを見事に活かす技量、となるとこれはもう、優れたシェフが切り盛りする
小さくて美味いリストランテのようですね。
ラニータって氷菓子ですが、もう立派な料理ですね。

f:id:PIATTI:20190817201126j:plain

f:id:PIATTI:20190817201140j:plain


店構えとしては、彼女の両親が始めたPasticceria:パスティッチェリアですから、
焼き菓子やトルタなどが並ぶ店で、正直言って結構年季の入った雰囲気ですが、
彼女が作るグラニータが突出している、といった感じでしょうか。
イタリア国内外のコンテストでも高い評価を得、職人として世界中に知人のいる彼女がもっと輝くオプションがあるのかもしれません。

素敵な笑顔でおおらかに喋り、えらく繊細で力強い氷菓子を作る姿は尊敬モノでした。結構話し込んで時間も過ぎてしまったことだし、帰ろうとすると


「明日も来るよね?!ホテルで食べないで、ここで朝食(グラニータとブリオッシュ)にしなよ!」

と声をかけてくれたので、そりゃあもちろん

「来るともさ!」

とご機嫌になったのでした。

f:id:PIATTI:20190817200943j:plain



次号に続く。

イタリア買い付け道中記 2019夏 その5

Ragusa:ラグーサへ。
シチリアでD.O.Pに認定されているチーズは、このラグーサで作られるRagusano:
ラグサーノを含めてたったの4つしかないというので、やっぱりきちんと見てみたいと。

訪ねたのは Caseificio Occhipinti:カセイフィーチョ・オッキピンティ
出迎えてくれたのはLeonardo:レオナルド氏。
彼に色々と話を伺い、試食までさせていただきました。

ラグサーノは食パン1本より少し長いかなという位の、四角い断面をした直方体の形状です。
モッツァレラチーズと同様にpasta filata:パスタ・フィラータと呼ばれるタイプ
ですので、一旦塊になったカード(タンパク質の塊)に熱湯を加えてトロトロに
溶かし、それを練りながら細く伸ばした後、何度も折り重ねながら塊を
つくっていきます。

それを直ぐ様型に入れるのですが、まだ柔らかさを持った塊だったのものが、
カチャカチャと押さえ板を当てたり外したりしながら90度ずつ返していくと、
徐々に食パンみたいな形になっていくのは面白いものです。

f:id:PIATTI:20190815181748j:plain

ある程度固まったらこれを飽和塩水につけます。
チーズの重さによりますが、チーズ重量1Kgあたり1日ぐらいだそうで、
15Kg程度の大きさなので2週間ほど塩漬けするという事になります。

その後、今度はこれをさらに2週間ほど紐で吊るします。
細長い食パンの形をしたこのチーズを真中あたりで紐でしばるので、
だらりと折れ曲がるのがなんとも風情です。

f:id:PIATTI:20190815181835j:plain

ところでこの工程、食パンみたいな形にする以外はまるでcaccio cavallo:
カッチョ・カヴァッロと同じだなぁと言ってみると、そうなんだよ・・・と
意外な話を聞くことが出来ました。

そもそも、caccio cavallo:カッチョ・カヴァッロの“カッチョ”はチーズを意味し、
“カヴァッロ”は馬を意味します。
チーズを2つ紐で繋いでそれを馬の鞍にまたがせて運搬していたという往時の人々の
知恵からすると、何処の地域であってもごくごく普通にあったに違いないと思います。

またその形についても、「紐で縛る」という目的からすればひょうたん型にするのが
効果的だろうなとは想像しますが、このチーズみたいに細長い形にして真ん中で
縛るというのもありだなぁ思うのです。

だからカッチョ・カヴァッロって名乗りたいところなんですが、そこはちょっと
複雑で、既にプーリア州でカッチョ・カヴァッロ・シラーノとしてD.O.P
(原産地保護呼称)の認定がされているので、それはNGだという訳です。

なので、
現地シチリアでは Cosacavaddu:コーサカヴァッドゥ
イタリア語で言い直すと Cosa cavallo:コーザ・カヴァッロ
とも呼んだりしますが、現在ではれっきとしたD.O.P:原産地保護呼称のチーズとしてRagusano D.O.P:ラグサーノ・ディー・オー・ピーという名前でして登録されているのです。

このラグサーノは
・製造期間は11月から4月までの間とし、
・熟成3ヶ月を経た後、Consorzio:コンソルツィオ(生産者協会)による
 第三者検査で100点満点中80点以上得点する事
を条件としています。

熟成3ヶ月以上が必要なため、Ragusano:ラグサーノには柔らかいフレッシュタイプが存在しません。
あるのは
・semistagionato:セミスタジオナート 3~7ヶ月熟成
・stagionato  :スタジオナート   12,18,24,36ヶ月熟成
となります。

セミスタジオナートはやや柔らかで優し目、スタジオナートはしっかりとした
熟成感があり、少しピリリとしたアクセントも素敵です。

塩味がしっかり目の傾向にあるのは、気温の高い時期にも保存する必要性がある事に
加え、野菜や果物の味わいが濃い事や豆類も比較的豊富に食するこの地域ならではの
バランスの上にあるからなのだろうと思います。

f:id:PIATTI:20190815182034j:plain

f:id:PIATTI:20190815182050j:plain

f:id:PIATTI:20190815182106j:plain


地のものを頂く有り難みは、決して単体のみを薄っぺらに評価するのではなく、
そこからその食の広がりを想像する楽しみに繋げることにあるように思います。

食材を作っている生産者に会って話を伺うという事は、彼らのそうした背景や歴史や
思い、哲学に至るまでを、その熱意とともに感じ得られる事かなと。

f:id:PIATTI:20190815182146j:plain


次号に続く。

イタリア買い付け道中記 2019夏 その4

Modica:モディカへ。

かつて取り扱っていた、古代チョコレートで有名な町。
諸事情で取扱をやめてからは、何となく足が遠のいていたのだけれど、
コッラードとシモーナが私を連れて行きたいと探してくれた生産者を訪ねてみることに。
そう、訪ねてみることに、という言葉からして少し後ろ向きなスタンスだったのかも。

Sfizi Golosi:スフィツィ・ゴローズィはモディカの町を少し外れた、
しかも住宅街みたいなところに工房がありました。
出迎えてくれたのは工房代表者のMaria:マリーア。

古くは南米アステカ文明に遡るチョコレートの歴史は大変興味深いもので、
(この話だけでも長々いきそうなのでこれは改めて…と言うことで、)
遡ったルーツの最も源流に近いところにあるチョコレートこそ、Cioccolato di Modica:
モディカのチョコレートと言っていいと思います。

故に、その歴史に恥じぬよう、粛々と昔ながらを継承してきたようですが、
固くて割りにくいチョコレートは現代の風潮とはやや異なるのは確かで、
それほど広がりを見せてこなかったと実感しています。

それが現代の今頃になると、少し現代人の趣向に合わせるかのごとく、
薄く、小さく、そして割りやすいチョコレートに様変わりしていました。

モディカの町を歩けば、それこそ若い人たちが小さなスペースを使って洒落た
チョコレートショップを開き、それぞれの店の包装、ブランドとしてモディカの
チョコレートを販売している風が見て取れます。

そんな時代の流れの中、マリーアが情熱を注ぎ大切にしているのが原料となる
カカオマスの質。
試食を頂きながら目にし、耳にした内容はほぼこれに尽きると。

そもそも、モディカのチョコレートの製造方法はいたってシンプルです。

 ・カカオマスを体温位の温度で溶かし
 ・これを徐々に50℃くらいまで温め
 ・砂糖及び他の原材料(バニラやシナモン、ペペロンチーノ等々)を混ぜ合わせた後
 ・再度体温くらいまで冷まし
 ・形に入れて、とんとんと振動させて気泡を抜いて
 ・除湿装置に入れて水分を抜いて完成

 

f:id:PIATTI:20190815165638j:plain

f:id:PIATTI:20190815165601j:plain


f:id:PIATTI:20190815165902j:plain


こうして出来たチョコレートは砂糖のザラザラとした結晶が残る形となり、
落雁(らくがん)を思い起こさせるようなサクサクとした食感が楽しめます。
比較的温度に対して強いので、溶けてしまう心配をせずに保存する事もできますから、
山などへのハイキングや自転車でのツーリング、はたまた非常食などにも活躍して
くれるという利点まであります。

f:id:PIATTI:20190815165932j:plain

シンプルだからこそ、素材がものを言うのです。
ここではやはりカカオマス
マリーアの話に熱がこもります、というかこもりっ放し。

f:id:PIATTI:20190619181302j:plain

 

f:id:PIATTI:20190619181326j:plain


ちなみに、カカオマスってどんな風にしてつくるのかというと・・・
 ・カカオの硬い外皮を割る
 ・種(周りにある白色の果肉も含めて)を取り出し、陶器の壺に入れて発酵させる
 ・天日干しして水分を取り除く
 ・焙煎機で熱風を当てて焙煎する
 ・粉末状に細かく挽く
 ・加熱して溶かし、タブレット状に形作って完成

モディカのチョコレートに使うカカオマスは、そこからカカオバターを取り出したり、
或いは添加したりなどしない純然たるものである事が必要で、もともと含まれている
カカオバターによってあの独特でかつ高貴でさえある味わいと香りがもたらされるのです。

何でそもそもカカオバターを取り出すのか?
それは昔からの知恵で(実際にカカオからカカオバターを取り出すことに成功したのが
ココアで有名なバンホーテン)美容品等、付加価値の高い商品の原材料としての需要が
あっただからだそうです。

カカオバターを取り出した残り(surrogato:スッロガート)は、チョコレートの
原材料として安価に入手できるものとして広く流通していますが、表示における
概念が浸透しているわけではないので、それですらカカオマスといって売る者も
いるのだそうで、消費側にとっては混乱の種です。

現代だから食べやすさ、敷居の低さは一定量、必要があるとはいうものの、
原材料として大事な部分となるカカオマスは純度の高いものでは無くてはならないし、
さらにはカカオバターの含有率が高い、高品質なカカオマスを使うのが私の流儀、と。

見た目ポップなデザインの可愛らしい見てくれとは裏腹に、早々に熱い想いを持った
生産者であると言えると感じた次第です。

f:id:PIATTI:20190627152747j:plain


次号に続く。

イタリア買い付け道中記 2019夏 その3

午後になってもまだまだ暑い真っ只中のAvola:アーヴォラ。
向かったのは Museo della Mandorla di Avola:アーヴォラ産アーモンド博物館。

f:id:PIATTI:20190618163958j:plain


アーヴォラ産のアーモンドはI.G.P(Indicazione Geografica Protetta:
インディカツィオーネ・ジェオグラフィカ・プロテッタ)に選定された事もあり、
栽培・飼育・収穫についてキチンと説明すべく、こうした博物館が
用意されたのだと思います。

この暑い時期、平日、ガラガラというか館内のスタッフ全員のお・も・て・な・し
視線を一身に浴びながらの訪問となりました。

現在認定されている3種類のアーモンド(Pizzutta:ピッツッタ、Fascionello:
ファッショネッロ、Romana:ロマーナ)の違いや自生するものと挿し木によるものの
違いなどの説明に続き、へぇと思ったものが「外皮」についての話。

guscio:グッショと呼ばれる硬い外皮は、その内側にある“仁”を守ります。
“仁”は要するにアーモンドそのものですから、食べられない外皮は薄くて、
反対に食べられる“仁”は大きくて厚みがある方がいいじゃないですか!
・・・という事で沢山水をあげたりしてぷっくりさせよう、なんて気持ちが
働くのは普通の事でしょう。

一方、この地に成るアーモンドは、海外含め他地域のものに比べ、必要以上に
水をやったりしないので”仁”は小さく薄いまま。
せっかくのアーモンド(仁)が何だか貧弱な感じで商売的に宜しく無いのでは?
と思いきや、この厚い外皮のお蔭で長くストックする事ができ、かつ乾燥し過ぎたり
カビたりするリスクも低いとの事。
必要に応じてストックしておいたものから新鮮なアーンモンドを取り出せば
よいのです。

それから、現地でアーモンドのグラニータを食べて感激したのですが、
驚くほど味と香りが濃厚で美味いのです。
いやぁ、流石に違うもんだと。
つまり、小さくて薄っぺらいけれどそこには濃縮した美味が眠っているわけですね。

ところで何でこの地がアーモンド栽培に適した土壌になったかというと、
古来より湿地帯であり、地下水が至るところに流れているからだそうで、
前述の話から想像するに、広範囲ながら且つ多すぎず少なすぎず、
という微妙な塩梅だったのではと思います。

また、博物館にはcanna di zucchero:カンナ・ディ・ズッケロ、つまりサトウキビが
植えられていました。
その説明として、紀元800年頃にアラブ人がもたらしたものであり、湿地帯のこの地に
適したサトウキビは砂糖やラム酒の原材料として戦前まで多くの富をもたらして
くれたものとのことです。

サトウキビのあるところ、下に水あり。
という事でアーモンドの木を植える目安にもなったのでしょう。
で、そのバランスが良かったのかもしれません。

現在では機械で硬い外皮を割り外しますが、ほんの数十年前は鉄道のレールを止める
鉄釘を引っこ抜いて?!一つ一つ叩き割っていたそうです。
家族総出で黙々とやるその風景を撮った白黒写真が何だかキュンときます。
時代はこんな風に、当事者の預かり知らぬところで変わっていくのでしょうか。

f:id:PIATTI:20190815162150j:plain

f:id:PIATTI:20190815162211j:plain

f:id:PIATTI:20190815162239j:plain


さて、アーモンドはいろいろな楽しみ方はありますが、今度はMariella:マリエッラに
よるLatte di Mandorla:ラッテ・ディ・マンドルラ(アーモンドミルク)の実演です。
午前中は彼女の店で粉物教室をしてもらい、午後は博物館でアーモンド菓子教室。
ホントにお世話になってます。


ラッテ・ディ・マンドルラはかつて私も輸入をしていた事もあり、
アーモンドを挽いた粉に砂糖を加えて練ったマジパンを水で溶いて出来るもの、
として認識していましたが、それは簡易版で、本来の作り方を知らずにいました。

実際に目の前でやってもらいました。
・硬い外皮を割って出した未だ薄皮のついたアーモンドをローストした後
・細かく砕いたら水を加えて(好みでシナモンを加えるのも可)ペースト状に
・これを布にくるんで水を張ったボールに漬けて揉むと徐々に白く濁った液体に
・最後に砂糖を加えて完成

f:id:PIATTI:20190815162311j:plain

f:id:PIATTI:20190815162332j:plain

f:id:PIATTI:20190815162351j:plain


ラッテ・ディ・マンドルラはこうして出来上がります。
ラッテ・・・・と書くのはミルクのように白く濁るからで、ミルクを入れている
わけでは無いのです。
見ても書いてもシンプルな作り方ですが、最初の段階が一番大変そうです。
そして、このコクのあるアーモンドだから美味しいんだなぁとつくづく実感。

続いてPaste di Madorla:パステ・ディ・マンドルラ。
彼女はこれをBiscotti di Mandorla:ビスコッティ・ディ・マンドルラと呼んでいました。
とはいえ二度焼きした硬い所謂ビスコッティとは異なります。

実際に目の前でやってもらいました。
・アーモンドの薄皮を剥き、細かく挽く
・砂糖、レモン外皮、はちみつ、全卵を混ぜ合わせる
・これを捏ねて形どってオーブンで焼いて完成

f:id:PIATTI:20190815162621j:plain

f:id:PIATTI:20190815162609j:plain

f:id:PIATTI:20190815162651j:plain

 

f:id:PIATTI:20190627141220j:plain


これまた見ても書いてもシンプル極まりない。
食べました、はい、美味しいです、凄く。
変な香料に頼らない、直球勝負の味わいです。
だから美味い。

彼女は何だか簡単そうにやってましたが、それは恐らく小さい頃から両親の働く姿を
側で見ていたからでしょう。
説明が理路整然としていたことは、彼女が努力してキチンと学を修めた知力でもって
改めて自身の環境を見直した事の表れではないかと察します。

アーモンドの名産地として知られるアーヴォラを見誤っていたようです。
さすがのもんでした。
博物館の全スタッフの心意気を全て受け止められたかはわかりませんが、
それを伝えていこうと思います。

次号に続く。

イタリア買い付け道中記 2019夏 その2

シチリアの朝は、グラニータとブリオッシュ。
普段はレモン派の私ですが、ここはアーモンドの名産地のAvola。
granita di mandorla の美味しさには敵いません!

f:id:PIATTI:20190815154620j:plain

さて、Corrado:コッラードとSimona:シモーナ夫妻は、本来B&Bを経営する
宿主だけれども、今回の訪問のために事前にいろいろな献立を用意してくれて
いました。

まず一つ目として「地元の具材入フォカッチャを教えてもらう」講座でした。

連れて行ってくれたのはBaccio:バッチョというPanificio:パニフィーチョ
(ベーカリー)。
家族で営む小さなお店ですが、lievito madre:リエヴィト・マードレ(母なる酵母)を
使っていますので、これで作られるパンは味わい良く、かつまた胃にもたれない
軽さが特徴的です。

f:id:PIATTI:20190815154116j:plain


現在は娘のMariella:マリエッラが中心的な役割を担うようになってきたようで、
ハキハキと明瞭な説明で話を進めていってくれました。

Scaccia:スカッチャと呼ばれるものは、丸く生地を伸ばしたところにトマト、
そしてモッツァレッラやラグサーノ、パルミジャーノ・レッジャーノといった
チーズを乗せ、オリーブオイルを垂らして後は焼くタイプのもの。

 

f:id:PIATTI:20190815154148j:plain


今までにRagusa:ラグーサやCatania:カターニアシチリアのいくつか町でScaccia:スカッチャ、あるいはScacciata:スカッチャータというものを見てくると、
それぞれの村によって呼び名やイングレが微妙に変わるものの、パン生地にトマトと
チーズを乗せた後、生地を折りたたんだり、新たな生地で蓋をして焼くという
共通項があります。

思えばPizza:ピッツァもこうしたものですね。

もう一種類教えてもらったのは、Mpanata:ンパナータと呼ばれるもので、
これまた丸く生地を伸ばしたところに、スライスしたジャガイモ(シチリア
ジャガイモ、美味しいのです)と玉ネギ、リコッタ・チーズ、パルミジャーノ
レッジャーノを乗せ、新たな生地で蓋をして焼くというものです。

 

f:id:PIATTI:20190815154301j:plain


若い娘のMariella:マリエッラが手際良くさっと作ってくれたこの2品は
さすがの美味しさで、若いと言っても小さい頃から親のする仕事をずっと見て
育ったに違いないと思わせる貫禄ある味でした。
しかも冷えてからも結構美味しいのです。

 

f:id:PIATTI:20190815154405j:plain

f:id:PIATTI:20190815154419j:plain


手近に調達できる素朴な原材料を組み合わせた腹持ちのする伝統的な“粉モノ”。
こんなファストフードって素敵です。

説明を聞いている間にもひっきりなしに入ってくるお客さんを垣間見るにつけ、
何だかホッとするような気持ちになりました。

午前中から既に暑いAvola:アーヴォラの町では日中を歩き回ることは得策では
ありませんので、一旦宿に戻って少し休んでから夕刻また動き出すことにしました。

先のMariella:マリエッラは今度はLatte di Mandorla:ラッテ・ディ・マンドルラ
(アーモンドミルク)の作り方を見せてくれるというではありませんか。

いやはや有り難やありがたや。

次号に続く。

 

 

 

イタリア買い付け道中記 2019夏 その1

  • 日曜日の営業を終え、ドタバタと慌ただしく出発し、羽田空港手前の高速道路の

高架下にあるパーキングへ向かうも首都高出口間違え半時間のロス。
いつもどうしてこう優雅な振る舞いが出来ないのだろうか…?

何とか飛行機に間に合ったけれど、そもそも体調絶不調で結構辛い12時間…
ではなく二度の乗り換えを経て最終目的地に降り立つまで24時間。

久しぶりのシチリアの大地、心が躍る。

f:id:PIATTI:20190815151305j:plain


カターニアの空港で、予め予約しておいたレンタカーをさっと借りていざ出発!…
のはずだった、が、窓口の人が見えない「長蛇」というより「黒山の人だかり」。
すると何人かが受付のチケットを取る様にと教えてくれる。

 

f:id:PIATTI:20190617125431j:plain


機械には「ご予約のお客様は予約番号とお名前を」みたいな
インフォメーションだから、皆予約無しで並んでいる訳じゃ無いのだと
想像がつく。

で、ちなみにどの位待っているのかと街頭インタビュー。
すると、
「僕はまだ1時間だけどね…」
「俺は2時間だよ、ホントマジで。」
「私なんて3時間よ、ったく。」
この数字は全くもって盛ってませんから!

もうなんか、何でそうなるのか窓口に聞きに行くにも、人混みを
かき分ける気力すら起こらない。
レンタカーをキャンセルして友達に迎えに来てもらおうかとも考えたが、
予約をキャンセルするにもどっちみち待たなきゃならないし、なんかもう絶望的。

本日の最終目的地はAvola:アーヴォラ。
CataniaからSiracusa:シラクーザを経て更に南下した所。
宿主のCorrado:コッラードとSimona:シモーナは知人を通じて日本で知り合った。
名産のアーモンドについて話が盛り上がり、今回の訪問に繋がった。
そんなわけで当初の予定なら昼過ぎに着いて、一緒にご飯を食べようと
約束していたけれど、いつになるかわからない旨連絡する羽目に。

半時間ほど待っただろうか、何やら少年が先の受付チケットの機械の下にある
看板の文字を指で辿った後、親に向かって話すや、その家族は
足早に去っていくのを目にする。

果たして何かの宣伝の看板かと思っていたそれは、
“Hertz Gold Plus Rewardをお持ちで既に予約が完了している方は直接駐車場へ”、
という案内だったのです。

そう言えば自分もそのHertz Gold Plus Rewardなる特典に登録していて、
一体何の役に立つのかなぁと思っていたので、まさかこんな所威力を発揮するとは!

急いで空港ロビーを出るも、当該駐車場まで案内が無い?!
ので道行く人々に聞きつつ何とかたどり着く。
ホント、カターニア空港でのレンタカー、皆さんお気を付けて、です。

という事でコッラードに電話し直し、一緒にご飯を食べようと張り切って
ゴリゴリぶっ飛ばす。

「Buon rientro:お帰り!」

気の利いた言葉で迎えてくれた彼らと2年ぶりの再開を喜び、自宅で用意して
くれていたパキーノトマトのパスタやナスのパルミジャーナなどを有り難くがっつく。
「はぁ~美味い、美味い、うまい。」

シチリアに帰ってきたんだ。

次号に続く。

イタリア出張のお知らせ

6月17日(月)から6月25日(火)はイタリア出張のため、

店舗、WEB発送業務ともお休みをさせて頂きます。

期間中はご迷惑をお掛けしますが、どうぞよろしくお願い致します。

※なお、6月16日(日)の店舗営業は18時にて終了となりますので

 お気をつけ下さいませ。

 

今回は久しぶりのシチリア(東側)です。

 

只今、あちこちの生産者や知人にコンタクトを取りつつ、
予定をまとめているところです。
直前になって、ようやく固まってきた感じ。

今回の出張は、面白いことにピアッティのお客さんにご縁を頂いて
訪ねる所や、北イタリアの友人に教えてもらって訪ねる所が
たくさんあります。

 

縁は異なもの味なもの、という事ですね。

 

買い付け道中記もどうぞお楽しみに!